松戸市の税理士高橋会計事務所

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交際費課税の平成18年税制改正

H18.11.07

1.交際費課税の概要
2.損金とならない交際費の概要
3.一人当たり5千円以下の飲食代の適用除外(平成18年税制改正)
4.資本金1億円超の法人にも適用がありますか?
5.適用時期はいつからですか?
6.得意先に差入れる「弁当代」は対象になりますか?
7.一人当たり5,000円以下の判定での消費税の取扱は?
8.テーブルチャージ料、サービス料、送迎タクシー代などの取扱は?
9.表示科目は交際費のままでいいのでしょうか?
10.会議費との区別に改正はありましたか?
11.取引先1名と当社相当人数の参加の場合の飲食代は?
12.社内役職員間での飲食費の取扱はどのようになりますか?
13.子会社役職員は社外の範囲に含まれますか?
14.ゴルフ等に際しての飲食費の取り扱いは?
15.一人当たり5,000円以下か否かの判定式は?
16.一次会と二次会を行った場合の飲食費は?



1.交際費課税の概要

 交際費は事業活動を行うにあたって必要な費用と考えられますので、法人税法では原則として損金の額に算入されます。
 ただし、企業資本の蓄積と冗費節約などの理由から、租税特別措置法で損金算入には一定の制限が設けられています。

 また、納税者側では交際費課税を避けるために、会議費、厚生費、広告宣伝費などの隣接費用として計上することも十分に考えられますから、税務調査においても比較的問題となりやすい項目となっています。
 例えば、従来、会議費との区分において条文上明記はないものの、1人当たり3,000円を基準として区分する企業なども少なくありませんでしたが、平成18年税制改正により新たに5,000円基準が明記されることになりました。
 ただし、そのためには一定の書類を保存することが必要となるなどの要件がありますので、事務負担が増加することは確実と考えられます。

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2.損金とならない交際費の概要

 基本的に1事業年度が12ヶ月の中小企業の場合には、交際費の10%は損金に算入されません。
(ただし、支出交際費の額が400万円を超える部分については全額損金不算入となります。)

 また、今回の改正により、一人当たり5千円以下の飲食代については、交際費課税の対象となる支出交際費から除外されることになりました。納税者側からは有利な改正といえますが、条文上は一定の書類の保存など、適用除外とする要件は厳しいものとなっています。

資本金 区分 損金不算入額
1億円超 なし 全額が損金に算入されません。
1億円以下 支出交際費 「定額控除限度額」超 (支出交際費の額−定額控除限度額)
+(定額控除限度額×10%)
「定額控除限度額」以下 支出交際費の額×10%
(注)定額控除限度額=400万円×その事業年度の月数÷12ヶ月

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3.一人当たり5千円以下の飲食代の適用除外(平成18年税制改正)

 今回の改正では、支出交際費の範囲から、「飲食その他これに類する行為のために要する費用(専らその法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く。)であつて、その支出する金額を基礎として1人5,000円以下の費用」が除外されることになりました。

 この場合の1人5,000円以下の金額とは、対象となる費用を参加者の人数で除して計算した金額をいいます。

 また、カッコ書きにあるように、外部関係者を交えないいわゆる社内飲食費は除かれていることに注意が必要となります。(措法61条の4B二)

 なお、この交際費除外規定については、要件に該当する飲食費であるか否かを判断するために下記のような一定の事項を記載した書類を保存する必要があります。(措法61条の4C、措法規21の18の2)
その飲食等があった日
その飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名又は名称とその関係
その飲食等に参加した者の数
その飲食等のために要する費用の金額並びに飲食店、料理店等の名称及びその所在地(ただし、店舗を有しないこと等により不明な場合には、領収書等に記載された氏名・住所等でよいこととされています。)
その他参考となるべき事項

 以上のように、この規定の適用にあたっては、かなり細かい保存要件を満たす必要があります。
消費税の仕入税額控除でも記帳要件等かなり細かく規定されていましたが、実務界からの要望もあり、実際は運用面で緩和されているのが現状です。
 交際費においても、税務調査等で、どの程度この保存要件が重視されるのか興味深いものがありますが、要件は要件ですので、保存しておくことに越したことはないでしょう。

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4.資本金1億円超の法人にも適用がありますか?

 この5,000円基準は、支出交際費の額についての規定であり、大法人・中小法人の区分なく規定されています。
 従って、期末資本金1億円超の大法人であっても、要件を満たす限りは損金不算入の計算の基礎となる支出交際費の額から除外することになります。

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5.適用時期はいつからですか?

 この規定は、平成18年4月1日以後開始する事業年度から適用があります。

 交際費課税の規定自体は、平成20年3月31日までに開始する事業年度までと、租税特別措置法上の時限立法となっていますが、昭和57年4月1日以降、適用期限が到来するたびに延長されていますので、今後も延長される可能性は高いと考えられます。
(ちなみに、この規定を延長しない、つまり、適用期限をもって廃止ということは、原則法人税法22条に立ち帰り、損金算入OKということになります。)

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6.得意先に差入れる「弁当代」は対象になりますか?

 支出交際費の額の範囲から除外される飲食費は「飲食その他これに類する行為のために要する費用」と定義されています。
 そして、弁当代は、「これに類する行為のために要する費用」に該当するため、交際費の範囲から除外されることが国税庁から公表されている「交際費等(飲食費)に関するQ&A」(H18.5)で明らかにされています。

 この場合の弁当代とは、「差入れ後相応の時間内に飲食されることが想定されるもの」を前提としており、単なる「飲食物の詰め合わせ」はお中元やお歳暮となんら変わらないという趣旨から、従来どおりの交際費として取り扱われます。(つまり、支出交際費の範囲からは除外されません)

 また、これらに関連して、飲食店等での飲食後、その飲食店で提供されている飲食物の持ち帰りに要する「お土産代」を同飲食店に支払う場合には、そのお土産代も「これに類する行為のために要する費用として」飲食費に含め、5,000円基準の判定を行います。
 ただし、この場合には、差入れ後相応の時間内に飲食されることが想定されるか否かは問われません。

 一見、単なる飲食物の詰め合わせと取扱が矛盾しているように感じられますが、同一の飲食店等からの領収書で、飲食代とお土産代の明細が必ずしも明確にされているとは限らないという現実を配慮したのかもしれません。

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7.一人当たり5,000円以下の判定での消費税の取扱は?

 一人当たり5,000円以下か否かの判定は、消費税について税抜経理を選択している場合には消費税抜きの本体価格で判定し、税込経理を選択している場合には消費税込みの価格で判定します。

 印紙税の金額判定や少額減価償却資産の判定においても、同様の基準が採用されているため、税法では税込判定か、税抜き判定かの基本的考え方は一貫しているようです。

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8.テーブルチャージ料、サービス料、送迎タクシー代などの取扱は?

 テーブルチャージ料・サービス料は、通常、飲食等をするために必要な費用と考えられるため、飲食費等に含まれます。また、上記6.と同様にこれらの費用が、飲食店等からの領収書等に必ずしも明細が記載されるとは限らないという現実も理由のひとつと考えられます。

 一方、送迎タクシー代は、飲食等をするために直接必要な費用とは認められないものであり、支払先も飲食店等とは別になるため、交際費等の範囲から除外される「飲食その他これに類する行為のために要する費用」には該当しないことになります。(ただし、接待のために間接に要する費用には変わりありませんから、交際費として取り扱われます。)

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9.表示科目は交際費のままでいいのでしょうか?

 交際費等の範囲から除外される「飲食その他これに類する行為のために要する費用」についての規定は、交際費課税を計算する際の支出交際費の額から除外するという趣旨の規定であり、科目の性質そのものを変更する規定ではありません。。
 従って、勘定科目の変更の必要はなく、交際費勘定の中で「交際費課税の対象となる支出交際費」と「それ以外の交際費」に区分することになります。実務上は交際費勘定の中に補助科目を設定するなど、決算手続きがスムーズに行えるようにしておくことがポイントとなります。

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10.会議費との区別に改正はありましたか?

 交際費等の範囲から除外される「飲食その他これに類する行為のために要する費用」についての規定は、あくまでも交際費課税を計算する際の支出交際費の額から除外するという趣旨の規定です。
 つまり、上記9.でもご紹介したように勘定科目の性質そのものを変更する規定ではないため、交際費と会議費の区別などは従来どおりとなります。

 従って、会議の際に供される飲食代については、会議としての実態を備え、かつ、社会通念上通常要すると認められる程度の支出ならば、たとえ一人当たり5,000円超であっても交際費課税の計算対象からは当然に除外されます。

 この場合には、税務調査等であらぬ疑いをかけられないように、会議等の目的や必要性など、会議としての実態を立証できるように心がけることが重要となります。

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11.取引先1名と当社相当人数の参加の場合の飲食代は?

 この支出交際費除外5,000円基準の適用にあたっては、「専らその法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するも」のを除くとされ、いわゆる社内飲食費は適用対象からは除外されています。

 例えば、参加者の殆どが社内の役職員であり、取引先はごく少数の場合であっても、当社役職員の参加の必要性の度合いや開催の目的など、総合的に判断することになります。
 仮に、社内役職員の飲食が目的であり、交際費課税を回避するために、形式的に取引先数名を参加させた場合になどは、当然に5,000円基準の適用はありません。結局は、どのように事実認定を行うかということに尽きるのではないでしょうか。
 とはいえ、納税者としては、書類保存要件などの形式的な基準は最低条件として認識し、クリアしておくことが必要でしょう。

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12.社内役職員間での飲食費の取扱はどのようになりますか?

 この支出交際費除外5,000円基準の適用にあたっては、「専らその法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するも」のを除くとされ、いわゆる社内飲食費は適用対象からは除外されています。

 ただし、そのような支出は即交際費課税となるわけではなく、「専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用」に該当する場合には、交際費課税の適用対象外となります(措置法61条の4B一)。(運動会、演芸会、旅行などは単なる例示であって、忘年会等(慰安のため)の飲食代程度も含まれると考えられます)

 つまり、この規定はあくまでも交際費の枠内での規定であって、交際費ORその他の費用科目の振り分けに関しては、従来どおりの基準で判定を行うことについての改正はないということです。

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13.子会社役職員は社外の範囲に含まれますか?

 この支出交際費除外5,000円基準の適用にあたっては、「専らその法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く」とされ、いわゆる社内飲食費は適用対象外としています。

 文中「その法人」とは、当然に「当社」と解されますし、それ以上の明文規定はありません(措置法61条の4@)。 
 従って、この支出交際費除外5,000円基準の適用対象会社は、「当社」以外となり、子会社役職員も社外の範囲に含まれることになります。

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14.ゴルフ等に際しての飲食費の取り扱いは?

 「飲食その他これに類する行為のために要する費用」については、この支出交際費除外5,000円基準の適用の対象とされます(措置法61条の4B二)。

 この文言だけでは、例えば、ゴルフ・観劇・旅行等の催事に際して支出する飲食等についても、この5,000円基準の適用対象となるか否かを判断することは困難と考えられます。

 これについての国税庁の見解は「通常、それらの催事を実施することを主たる目的とする一連の行為の一つとして実施されるものであり、飲食等は主たる目的である催事と不可分かつ一体的なものとして一連の行為に吸収される行為と考えられます」(国税庁「交際費等(飲食費)に関するQ&A」H18.5)とし、この支出交際費除外5,000円基準の適用の対象とはならないとしています。

 つまり、ゴルフ等に際して支出する飲食費は、基本的には飲食等のための支出ではなく、(広義に)ゴルフ等のための支出と考えているようです。
 ただし、その飲食行為が、一連の催事行為と別に単独で行われた(例えば、催事終了後に一部の者で飲食等を行った場合)と認められる場合には、この支出交際費除外5,000円基準の適用対象となるという見解も同時に明らかにしています。

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15.一人当たり5,000円以下か否かの判定式は?

 交際費等から除外される飲食費は、一人当たりの飲食費の金額が5,000円以下か否かにより判断しますが、一人当たりの飲食費は次のように計算します。

<算式>
一人当たりの飲食費の金額 =
   飲食等のために要する費用として支出する金額 ÷ 飲食等に参加した者の数

 この算式の結果、例えば6,000円と計算された場合、5,000円を超えることになりますので、飲食等のために要する費用として支出する金額の全額が交際費課税の対象となります。
 一人当たり5,000円を超える1,000円部分のみ交際費課税の対象となるわけではないことに注意が必要となります。

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16.一次会と二次会を行った場合の飲食費は?

 一次会と二次会を連続して行った場合でも、それぞれの行為が単独で行われたと認められる場合には、それぞれの行為に係る飲食費ごとに5,000円基準の判定を行います。
 単独で行われたかどうかは基本的には支払先の異なるごとに判定を行うことになります。

 例えば、国税庁「交際費等(飲食費)に関するQ&A」(H18.5)では、単独の行為の例示として「全く別の業態の飲食店等を利用しているとき」を挙げていますが、国税庁の意図としては、実質的に同一の飲食店等で行われた飲食等であるにもかかわらず、領収書を分割する、あるいは、催事の途中で一旦会計を精算して引き続き後半飲食行為を行うなどの、交際費課税回避行為は認められないという当然の取扱を、確認のために掲載したものと思われます。
 したがって、基本的には、一次会と二次会の支払い先が異なった場合には、分けて判定すると考えてよいでしょう。

 また、一般的に、忘年会などの、全員参加の1次会は厚生費として取扱い、任意参加の2次会は交際費などとされていますが、このケースでは、1次会は元々厚生費であり、2次会は社内役職員間での飲食費となりますので、5,000円基準とは無関係に交際費課税となります。



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