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デット・エクイティ・スワップ(DES) | |
H18.12.05 |
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1 | 概要 |
2 | 会社法における手続きの簡素化 |
3 | 金銭債務の評価額 |
4 | 会計上の取扱 |
5 | 税務上の取扱 |
6 | 地方税への影響 |
7 | 債権者側での損金算入の留意点 |
1.概要 | |||||||||||||||||||||||||||
デット・エクイティ・スワップ(以下「DES」という)とは、債務を資本に組み入れることをいい、従来から事業再生の際の債務超過解消手段として利用されてきました。 債務者側の企業では、借入金やそれに伴う支払利息の圧縮によりキャッシュフローの改善が期待できるほか、特に中小企業においては、会社オーナーを始めとする関係者からの借入金についてDESを活用することにより、自己資本比率などの表面的な財務数値を改善することができます。 平成18年税制改正において、資本に組み入れる債権を時価評価するなど、債務者側企業に不利な規定が設けられましたが、逆に、会社法ではDESの手続きの簡素化が図られるなど、税務以外では会社側が機動的に活用できるようになったともいえます。 |
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2.会社法における手続きの簡素化 | |||||||||||||||||||||||||||
DESのスキームとしては、債務者である会社が第三者割当増資を行い、それによって振り込まれた資金を債務の返済に充てる「新株払込方式」と、債権者が債権を現物出資する「現物出資方式」がありますが、後者の「現物出資方式」について、会社法により手続きの簡素化が図られました。
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3.金銭債権の評価 | |||||||||||||||||||||||||||
現物出資方式によりDESを行う場合には、債権の金額をいくらで評価して株式化するかという問題が生じます。一般的には、債権の額面で評価する「券面額説」と、債権の時価で評価する「時価評価説」があります。 券面額説は、資本充実の原則の面から問題があるではないかという意見もありますが、東京地裁により券面額説でも問題がない旨の見解が示されたため、それ以降は実務上、券面額説による処理が一般的となりました。 そうした事情も踏まえ、会社法では金銭債権をDESにより現物出資した場合の検査役の検査不要の事項として、会社法207H五において →「当該金銭債権についての現物出資資産の価額」とし、 会社計算規則34条@一ロ(資本金等増加限度額の計算)においては、 →給付を受けた財産の給付期日等における「価額」と規定しています。 この場合の「価額」とは、一見して「時価」のように読めますが、平成18年法人税改正で債務者側の処理について時価評価説が採用されたことに配慮して「価額」と表現したものであり、会社法上では「券面額説(簿価処理)」「時価評価説(時価処理)」のいずれでも採用できるように、単に「価額」という用語を用いたといわれています(企業会計2006Vol.58No.10中央経済社) |
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4.会計上の取扱 | |||||||||||||||||||||||||||
債務者側の処理としては、券面額説及び時価評価説のいずれも認められますが、 債権者側の処理は時価評価説が基本となります。
(1)債務者側の処理
(2)債権者側の処理 DESを行う債権者側の処理に関しては、「デット・エクイティ・スワップの実行時における債権者側の会計処理に関する実務上の取扱い」(企業会計基準委員会、H14.10.9)が公表され、債権者がDESにより取得する株式は取得時の時価で計上し、消滅した債権の帳簿価額と時価との差額をその事業年度の損益として計上することが明確化されました。 考え方としては時価評価説を採用していることになります。 <会計基準のポイント>
従って、上記の設例による場合の仕訳は次のようになります。
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5.税務上の取扱 | |||||||||||||||||||||||||||
債務者側の取扱は、従来は明文規定が存在しなかったため、少なくとも東京地裁により券面額設でも問題がない旨の見解が示された2001年以降は、券面額説による税務処理が定着していました。 しかし、平成18年税制改正において時価評価が強制されることになりましたので、会計上、券面額説に基づく処理をしている場合には、税務調整が必要となります。 また、税務上の債務免除益に関しては、法法59条(資材提供等の欠損金の損金算入)の適用範囲の拡大などの手当ても整備されました。 一方、債権者側の取扱は、従来どおり券面額説に基づく処理(適格現物出資に該当する場合を除く)を行いますが、債権譲渡損失の損金性についても十分に検討しなければなりません。 (1)債務者側の税務上の取扱〜債務滅失差益〜 改正前法人税法においては、DESに係る資本組入額に関しての明文規定はなく、法人税法でも会計上の取扱と同様に、券面額説による資本組入れが可能であるとの前提で実務が定着していたことは先にもご紹介したとおりです。 ただし、平成18年税制改正により、DESに係る資本金等の額は、原則として時価評価説が採用されることになりました(適格現物出資の場合を除きます)。
従って、次の設例の場合の税務上の処理は以下のようになります。
(2)債務者側の税務上の取扱〜私財提供等の欠損金の損金算入〜 上記(1)の取扱によった場合には、税務上、債務滅失差益に対して課税が生じることになり、企業再生等を目的としたDESについて資金的に支障をきたすことが予想されます。 そこで、平成18年税制改正においては、それに対する手当てとして、法法59条(私財提供等の欠損金の損金算入)の適用範囲に「当該債権が債務の免除以外の事由により消滅した場合でその消滅した債務に係る利益の額が生ずるときを含む」(法法59@一)旨を追加して、債務滅失差益についても、期限切れ欠損金について損金算入できる可能性を確保しました。 ただし、法法59条(私財提供等の欠損金の損金算入)の規定は、元々、会社更生法や民事再生法などの法的整理手続きによるケース以外のいわゆる私的整理においては、「債務の免除等が多数の債権者の協議の上で決められる等その決定について恣意性がなく、かつ、その内容に合理性があると認められる資産の整理」などの制約要件があります。 従って、例えば中小企業におけるオーナー個人単独でのDESなどは当然に適用対象外と考えられますので、DESを実行する際の債務滅失差益課税は資金計画上、十分に注意する必要があります。 |
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6.地方税への影響 | |||||||||||||||||||||||||||
DESを実行する場合には、税務上はDESに係る債権の出資の時の価額が資本金等の額となるため、「地方税の均等割額」及び「外形標準課税における資本割」の増加要因になります。 通常は、券面額説より時価評価説によった場合のほうが増加する資本金等の額が少なくなりますから、納税者にとっては有利な改正ということができます。 つまり、地方税法の資本金等の額は,法人税法に規定されている資本金等の額と規定(地法23条44の5)されているためです。 因みに、その後、無償減資等を行って資本金を減額した場合でも、税務上その減額した額は資本積立金額の増加となりますから、資本金等の額に変更はないため減資前と同じ結果となります。 ただし、外形標準課税の適用対象法人については、現行の規定上(注1)「資本金等の額」ではなく、資本積立金額を含めない「資本の金額又は出資金額」が1億円超か否かで判定しますので、減資後に「資本の金額又は出資金額」が1億円以下となった場合には適用対象外となります。 つまり、外形標準課税については、対象の判定は「資本の金額又は出資金額」、資本割の計算は「資本金等の額」(注2)となることに注意が必要です。 (注1)現行の規定上とは、租税回避行為等を考慮しない、あくまでも現行の明文規定上の意です。 (注2)事業税の資本割の計算の時限特例措置 平成16年税制改正(平成16年4月1日から平成20年3月31日までの間に開始する各事業年度分)により、企業再生を図る過程等において、当該欠損金の削減等のための無償減資又は資本準備金の取崩については、その無償減資等の額を資本割の課税標準である資本等の金額から控除する特例措置が講じられています(地法附則9CL)。 |
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7.債権者側での損金算入の留意点 | |||||||||||||||||||||||||||
DESにより債権者が取得した株式に関しては、非適格現物出資に該当する場合には、その取得時の株式の時価により評価(法令119条@二十二)、適格現物出資に該当する場合には、適格現物出資の直前の移転資産の帳簿価額等(法令119条@七)と規定されています。 また、法基通2-3-14(債権の現物出資により取得した株式の取得価額)において、子会社等に対する合理的な再建計画等に基づく非適格現物出資の場合には、時価による旨を規定していますが、法令119条@二十二の確認通達と考えられます。 なお、上記のような非適格現物出資の場合には、現物出資直前の帳簿価額と時価との差額は債権譲渡損失として、一旦、法法22条により損金として認識されますが、一般的にDESは再建支援の一環として行われるものであり、債務者側への債権放棄により生じる損失としての性格も有していると考えられます。 従って、法基通9-4-2(子会社等を再建する場合の無利息貸付等)に規定する「合理的な再建計画」に該当するか否かについて十分に検討する必要があります。 |
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<参考文献> | |||||||||||||||||||||||||||
新会社法千問の道標(相澤哲他)商事法務 増資減資の実務完全詳解(太田達也)税務研究会出版局 法人税基本通達逐条解説 税務研究会出版局 企業会計2006Vol.58No.10 P94 中央経済社 税理2006Vol.49No.7 P89-93 ぎょうせい |
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